第5話 水飴!

俺は工場を停止させ、フィギュアと生産帳簿を回収した。
武装部隊やボスの顔を一応拝んだが、そいつら…俺と同じ姿をしていた。俺の未来の姿の様だった。牙が生え、爪が伸び、ツノもある奴はあって、まるで悪魔の様だった。

俺は工場を燃やした。殺した敵もここで働いていた人も全て燃えた。跡形無く消え失せるまで俺は見届けていた。

これで、スカイジャンパーのミニミニフィギュアはもう生まれない。
あとは、今あるフィギュアを集めて管理すれば全てが終わると思ってた。

そう、思ってたんだ。

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「ねぇハルト!!見て見て!!! あれ? ハルトー!! ハルトー!!! 何見てる?」

「あ? や…これ、スカイジャンパーの生産帳簿なんだけどさ、ここ。20ロット消えてんだよ。1日のうちに。工場から生産ミス扱いで消されててさ…ちょっと引っかかるんだよね」

「ふーん? 難しいことはわかんないや。それより見て!!!」

そう言ってリュカは自分の手を俺に見せ、手首をポッキリと反対側に曲げて取りやがった。

「ひっ……」

俺は心底恐怖する。そんな水飴みたいにグニュッと曲がって折れるなんて思わないだろ!?

「はい」って渡され折れた手首が俺の手のひらでモゾモゾ動く。待って、何これ。キモい。キモいんだけどリュカ…あ、嘘かわいい。その手首は小さいリュカになった。手のひらサイズのミニリュカだ。妙に幼いのが腹立つわぁ。

リュカとミニリュカは手を広げ、喜びを表す。
「大人になったー!」とリュカはいう。ミニリュカは喋れない様だった。

俺はそれより。リュカの手が片方短くなっていて腕から不恰好な指の様なものが生えていることに恐怖する。リュカの腕を掴んで確認する。間違いない!ミニリュカ分リュカの右腕は短くなっていた。

「おまっ…ちょっ。これ……」

言葉にならない説明をどうにかする。リュカは平然としてる。むしろ俺の反応を不審がってる様だった。

「原種だから当たり前だよ?」

「いや、でも…お前の右手が……」

「あ…ダメだった? 大丈夫! 待って。待っててね。ちゃんと戻るから!」

そう言ってリュカはミニリュカを食べた。バキッ。ゴリッ。という聞いてはいけない音を耳にする。俺は気分が悪くなった。。。

ゴックンしたリュカが俺に手を見せる。本当だ。元に戻ってた。
でもごめん、これそこが問題なわけじゃないんだよな……

「あのさ、リュカ。分裂は良いとして、その……食べて戻すのは、俺の前でやめてくれ」

「あっ…うん。わかった」

「ていうか、分裂したままならお前どうなるんだ?」

「裂いた分のエネルギーを補充すればリュカは戻るし、分裂した子はエネルギーが尽きたら勝手に消えるよ! 手だけじゃなく足でも頭からでも裂けれる!まだやったことないからわかんないけど、頭から裂いたら話せて考えれるんだって!リュカ裂けれるから大人になったの!」

「そ、そっか……」

俺はその日以降、リュカとたまにいるミニリュカとの共同生活が始まったのであった。

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「……まるで悪魔の様な爪や牙が不自然に伸び、異形化された人間が相次いで目撃されています!私達はその謎に迫っていきたいと思います」

TVで情報番組がそう告げる。チャンネル切り替えても大体この話だ。

今や、爪が伸びた人間は野蛮。牙の生えた人間は精神を乗っ取ってくる悪魔……と、社会的にこの姿が嫌悪されている。
まぁ、仕方ないよな……爪や牙の生えた人間は瞬間移動能力や精神操作能力を持っていて、それを私利私欲のために使ってくるってなってるんだから……実際、その考えは多分間違いじゃねぇよ……。
我欲の為に力を使い続けた俺の姿は変わり果て、欲のないリュカの姿は変わってないのだから。

幾分か前に、俺はもう配達の仕事はやめた。
リュカとお外へ出ることもやめた。街を散策することもやめた。
こんな姿で、街を歩くなんて……何されるかわかったものじゃないから。

異形化された人々が世に出て来てから、スカイジャンパーのミニミニフィギュアの価格がどんどん上がって行った。俺の市場回収も相待って今じゃ一般人には手が出せないほどの価格になっている。

はぁ。今、現状の唯一の救いはギロチンの公式が明かされてないことと、フィギュアの価格が吊り上がって無作為に市場に出回らなくなったことだけか……

コンピューターからの出力数値を目にする。
あと、10万個弱か……早いとこ回収しないとなぁ。。。頑張ろうっと

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「っ…ああ”っ!!」

狼狽し、俺は崩れ去る。ニュースで首切断による不審死が報道されていたからだ。
それも、1件じゃなかった。いや、犯人としては1人の仕業かもしれないけれど、、、

TVのニュースキャスターが、ある街で4つの生首が発見されたと報道していたんだ……