第7話 情報収集

「失礼しました」

そう言って職員室のドアを締める。朝から休み時間毎に聞き込みしているのにまだ、なんの情報も得られてない。もう昼休みだぜ?

奨学金受給したく、気になってるので制度教えてくれますかー?とかどのくらいの人数が受給されてるんですかー?とかオルティスグループ以外から制度についての打診出てますかー?とか詳しい先生教えてくれますかー?とか聞きまくってるのに、先生は誰一人として奨学金制度について教えてくれない。またたらい回しだ。

ノアは、他の奨学金受給生徒の情報を追っている。何回かオルティスの新製品試飲会とかそういったボランティア活動に参加したため、そこで出会った生徒に当たりをつけて聞き込みしてきている。試飲会行くまで受給者だとわかんなかったって言っているから、先生方も隠してるし、本当になんかありそうだ。

「エイデンー! どうだった?」

職員室から出てきた俺に近付いてくる赤茶の髪。ノアだ。俺は肩を落としオーバーに答える。

「全く。全然ダメ。もうなにもかもがダメ」

「めちゃくちゃ言うやん」

「はははっ。まぁね。誰一人として教えてくれないし、「あぁ……○○先生なら知ってるかも」ってたらい回しされまくったあげく一周したからな。逆によくこんな秘密めいた制度利用できたな。ノア」

「入学式の後、教頭から話を持ちかけられたからね」

「……マジか。俺、教頭に今日2回も聞きに行ったんだけど。何も答えてくれなかったんだけど!!!」

俺はあのハゲ頭に怒りを覚えた。

「僕が奨学金制度外された話も教頭直々に話してくれたし、教頭はなにか絡んでいると見ていいかもね……そこまで外部に内緒にする理由がわからないよ」

「……確かにな。ノアの方はどうだった?」

「僕と一緒で、なぜ奨学金外されたか理由不透明な人が居ました!……1人だけだけどね」

笑っていたけど、後半。ノアの声は震えていた。まぁ同じ心境を辿ったヤツがいるなんて手放しに喜べないよな。でもな、全くお前が後ろめたさを感じる必要なんてないんだぜ?ノア。俺は素直に嬉しいぞ?

「っしゃぁ!やっと手がかりだ!どんなやつ?」

ノアは眉を潜めて訝しげにこちらを見た。俺、ノアのこういうところマジで好き。

「それがね……卒業生なんだ。だからこの人への聞き込みはお姉ちゃんに任せようと思う」

タタタッっとなにか文字を打ってたノアがスマホから手を離しそう答える。ピロンと俺のポケットから音が鳴った。さっきまでの会話内容で得た情報をグループに上げてくれたのだ。さっすがノア様!!!

でもそんなノア様でもお手上げらしい。
打ってる途中からぶつぶつと何か唱えていた。いや。今は呻いている。

「ねぇ。エイデン…他に僕たちに何かできることあるかなぁ…もう少し情報が欲しいよ」

ノアは呻くのを止め俺に提案を求めてきた。
ノア様がここまで言うならしゃぁない。マジで頼りたくなかったんだけど…覚悟を決めるか。

「あー。。。情報、俺らより集められる人……1人知ってる…」

ノアの顔が輝く。

「えっ!エイデン!! 本当!!!誰!?詳しく」

「隣のクラスのミラってヤツなんだけどさ……ネットや電子機器に強くて…なぁ。ノア。これから見たこと聞いたこと誰にも言わないって約束できるか?あと、何も聞かないでくれるか?」

「えっ。あ、うん。」

「俺ら…金がないから、とんでもないことされるかもしれないけど…それでも………いや。嫌だったら全力で走って逃げろ。いいかノア。後ろを振り返らず全力で逃げるんだ。わかったか?」

「わ、わかった。……ねぇ。エイデン、本気で言ってる?」

「ああ。残念ながら本気だ…覚悟して……いや。やっぱ教室で待ってろ俺一人で行ってくる」

「ダメだよ!これは僕の問題だ!!!僕が行かなきゃ意味がない。君が1人で行くなら僕が1人でいくよ!!!」

「……そうだよな。すまん。。。その、頑張ろうな。」

「うん!!」

覚悟を決めた俺たちは屋上に向かった。
この学校の裏の女王がいつもお昼を食べている場所だ。

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扉の前で一度深く深呼吸をした。
……行こうか。ノアが頷くのを確認する。
俺たちは手を伸ばし、扉を押し開けた。

心境に相反し、眩い光と暖かい日差しが俺達を出迎えてくれた。光に圧倒された俺の視界はまだボヤボヤするし緊張でどうにかなっちまった動悸も合わさりクラクラする。吐きそうだ。
怯みきった俺に向かってとんでもない第一声が届く。

「あっ。エイデン君久しぶりぃー♡ またじょそ……」

「しない」

俺は即答した。吐きそうとか胃が痛いとか思ってる場合じゃなかった。ノアがこちらを見てる。

「じゃぁ、なにー? 払うもの払ってくれないとこの前みたいに情報操作もしてあげられないよ?」

「今日は違う。ってかその言い方止めろ!」

「言葉的には間違ってないもん!」

ノアが俺達を交互に見た後じっとこちらを見てる。やめろそんな目で見ないでくれ。違うんだ!

「ちぇっ。なんだぁ…ミラ的にはエイデン君に用があったのに……まぁいいや。で?なんの用?」

俺はノアに向かって目線を落とす。ノアは今までの経緯を話した。

「なるほどね。オルティスと学校との繋がりと、奨学金制度について調べて欲しいってことね」

「あ。あと、エイデンに言おうか悩んでたんだけど、僕のスマホ昨日から不審なメッセージが届くんだ。それについても調べてくれると嬉しい」

そういってノアはスマホを俺達に見せた。
[活動実績が報告されました]とポップアップメッセージが出ている。何のアプリからの通知か全くわからない。なにこれ怖

「うわっ……なにこれ怖っ」

あ。ミラも俺と同じ気持ちだったようだ。

「……わかったわ。調べてみる。今回は漁る情報が多いわね……2000ドル(30万円)でいいわよ」

「2000ドル!!?」
「その、ミラさん。ご容赦くだせぇ」

「ふふふっ。まぁあんたたち2人が貧乏人って事は知ってるし払えるなんて微塵も思ってないわ……ってこれでも安い方なんだからね!!!」

ミラは食べ終えたお弁当を片付けてこちらを向く。

「ノア・クレイン。あなたに1週間後のテストの予想問題集作りを命じます。期限は今日含め3日、土日挟んだ週明け月曜日の朝イチまでに渡してね。それで今回手を打ってあげるわ」

「1週間後のテスト……!?」
「嘘だろ!!またテストかよぉ!」

「そう。……エイデン君5ドル」

そう言ってミラは左手を俺に向けてきた。どうやらこれ以上聞くなら金払えって事らしい。

「チッ……」

俺は渋々ポケットから5ドル紙幣を取り出し、渋々ミラに渡す。ああ……さようなら俺のリンカーン……

「本当。エイデン君のこういうところ好きー」

俺の苦虫を噛み潰したかのような笑顔に反してミラは満面の笑みだ。スッと背筋を伸ばしてミラは続きを話した。

「じゃぁ。話に戻ろうか。そう、来週末金曜日の7限目に学年全体でテストが行われるの。前回の定期試験、著しく皆成績悪かったから…ほら赤点補講者多かったし。だから再テストが行われることになったの。幾何、生物、アメリカ史の3教科で」

「……ッツマジかぁあ!!」
「なるほどね」

俺は崩れ落ちそうになる。今回のテスト赤点補講ギリギリだったんだぞ!!!……え。嘘だろ?ギリギリすり抜けたと思ったのに……学年全体で再テスト!!?俺、またテスト受けんの!?

「エイデン君……www ふふっw まさかw君……」

「うるせぇ。つーかノアから予想問題集貰おうとしてる時点でお前も大概だからな!」

ミラは俺を見て笑ってる。
俺はおもいっきり睨み返してやった。
そしてノアは俺の事を怪訝な目で見ている……え?僕ちゃんと教えたよね?なんで?って顔だ。まったく。ひでぇ野郎共だ。

「……ふふっwはぁー面白かった。じゃぁエイデンの方も本題に入ろうか。エイデン・カーターあなたには明日、ナショナル・シティへの案内と護衛をお願いします。The Hollow Echo|《ホロウ・エコー》のライブ行きたいけれど、家族のものに知られたらめんどくさそうだし、1人でナショナル・シティ歩くのは怖いんだよね。ライブ夕方からだから、夜遅くなるわけだし……だから、護衛頼んだ!ライブ会場に行く前までと、私が家に帰るまで!」

「は?」

「エイデン君明日バイトないし暇してるでしょ?そのくらい知ってるんだから!だから、明日16時にシヴィックセンター前に待ち合わせね?時間ピッタリに来なさいよ!」

そう言いながらミラは俺の横を通り過ぎ、振り向きざまによくわからないポーズを決めて扉を開けて去っていったのである。

____正直俺は意味がわからなかった。

さっきから、ノアが俺とミラとの顔を交互に見て口元におててを添える動作もよくわからないし、俺のスマホから [16時 シヴィックセンター前] って通知が届くのもよくわからない。

とりあえず、俺はその通知主に [ノアに連絡先共有するぞ] と1言送って淡々と話す。

「今、お前にミラの連絡先を送った。でも、必要が生じても自分から連絡はするな。きっとめんどくさいことになるから……」

ノアは眉間に皺を寄せながら口角を無茶苦茶上げている。今日一ムカつく顔だぞ?ノア。後、残念ながらお前が思ってるような甘酸っぱい事にはならねぇよ。。。アイツにあるのは金に対する誠実さだけだぞ?………きっと。
まぁムカついたところでしょうがない。俺はこいつにお願いしなきゃいけないことがあるんだ。一度息を吐き、呼吸を整える。

「本当は3教科全て頂ければ嬉しいのですが、幾何だけでも俺に問題集分けてくださいませノア様!!!」

呆れた顔で俺を見る。本当ムカつく野郎だぜ。
……まぁ、ノアのこの顔芸したくなる気持ちもわかるよ。ノアからしたら奨学金受給条件が掛かった大事なテストの最中、俺の勉強まで見てくれたんだもんな……幾何学わからなさすぎてガチでごめんな。

「ちなみにさ、エイデン。……何点だったの?」

ほとんど顔芸してたやつがやっと口をひらく。俺は恐る恐る正直に答えた。

「…………よ、よんじゅう、にてん…」

「一問間違えてたら赤点じゃないか!!!!」

「本当。そう、そうなんだよ。……だから頼むよノア!!!お願いします!!!」

そう言って俺は超綺麗に90度近く腰を折り曲げた。

「…………エイデン君10ドル」

頭上から声が降り、さっきまでコンクリートの床を見ていた俺の前に、指先が綺麗に揃えられた手が現れる。
……俺は顔を上げた。

「なんてね。冗談だよ昨日一緒に作ったトルティーヤ美味しかったし、姉さんパンケーキ美味しそうに頬張ってたし、予想問題が出来次第送るよ。護衛も問題集作りも頑張ろうね!」

そう言って笑ってた。
やはり、信じられるべきはノア様かもしれない。

コメントくださいお嬢様!