第4話 会話

「おかえり~エイデン、遅かったわねってあらどうしたの?」

「ただいま」と言ってドアを開けた。そこに帰ってきたのは母さんの声だった。

「いや。別に。」

俺はそっけなく返す。

「そう? でも頬は腫れているし、あなた泣いているわ」

(俺が……泣いている???)

「あ、いや、あの…酔っ払いに絡まれて…。ちょっと殴られたっていうか…大丈夫だから」

咄嗟に頬が腫れていることを思い出し、どうにか取り繕いながら俺は腫れた左頬を触った。本当だ。指先に透明な液体がついていた。えっ。嘘だろ?マジ恥ずいんだけど……いつ???

あまりにも驚きの事で、自分のことで手一杯だった俺は、いつのまにか母がこちらに近づいて来ていることに気が付かなかった。俺は焦って顔をそらす。思いっきり頭を後ろに傾けかわそうとする。しかし母強し、両手でガッチリと顔を抑えられ目線を合わせてきた。やめろよ。恥ずいじゃんか。待って…?俺臭くないよね???硝煙の匂いとか血の匂いとかしないよね??? やばい。待って…やめろ、母さん。気付くな。気付くな!!!

「ふーん。。。結構腫れているわね。痛くない? あなたが泣くなんてとても久しぶりなことだから、お母さん心配しちゃった、待っててね傷薬とかとってくるわ」

母の優しい声。
心がぎゅっと締め付けられたかの様に痛くなる。
やばい。このままここに居たら俺の体から色々なモノが漏れ出してしまう。ぎゅっと心臓からソレが押し出されたら、もう。誤魔化すことはできないだろう。なんとかこの場から離れなければ……!!!

「いや、そこまで痛くはないから大丈夫だよ、母さん。俺、シャワー浴びてくるよ」

「そう?」

母の眉が動き、眉間に皺が寄った。やばい。ミスったか?
俺は慌てて付け足す。

「え……っと、その。実は帰り道にも酔っ払いに絡まれてちょっと怖かったんだ。だから、母さんの声を聞いて安心して……本当そんな酷いケガじゃないよ。口の中も切れてないしさ………ってもう恥ずかしいから離せよ。もう良いだろ!!」

そう言って俺は母さんの手を振り解く、母は笑って開放してくれた。

「もう。こんなに大きくなってもまだ子供で高校生なんだから、何かあったらちゃんと大人を頼るのよ? 全く……ゆっくりお風呂行ってらっしゃい、気分が落ち着くかもしれないし」

呆れながら母さんはそう言い、俺に道を作ってくれた。
助かる。これ以上の追撃がなくて本当に助かった。
何も嘘はついてないけれど、俺の心はさっきからずっとギュッと締め付けられるしドクドクうるさい。そして何より、とても痛かった。

俺は、母の優しさからも、嘘からも、逃げるように風呂場へと駆け込んだ。

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「これ、お前のせいだよな???」

俺は、右手の人差し指に刻まれた黒い痣を見つめた。まるで焼け焦げたかの様な痣。昨日風呂場で気づいたソレは、1日たった今でもじわりと微かな痛みを宿している。

その指先をマスケット銃に向けてグイッと突きつける。まるで、銃に問いかけるかの様に。
母さんは仕事に行った。俺は学校を休むことにした。今は午前8時、からりと爽やかな日差しが俺の自室を照らす。

「ああ。契約したからな」

ザミエルは少し笑って楽しそうに話す。この声は、感覚的に脳内に響くだけなので姿は見えないが………俺を嘲る様な、楽しそうな、にやにやとした表情が見えるかの様な声だった。

「契約したからって…お前っ。なんなんだよ!!! 俺に何をさせるつもりだ!!!」

「俺は、ザミエル・バレル。このマスケット銃に宿る悪魔だ。お前は、この銃に選ばれ、俺が与えた魔弾を使った。だから契約は成立した。お前に何かさせるつもりはない、ただ俺はお前に力を与えただけだ」

「…はぁ? 選ばれた…だって?? ふざけんな!!!! 俺はこんなもん持ちたくない!!!」

俺は椅子からダンっと立ち上がり、声を荒げて精一杯答える。少し時間を置き、シーンとした空気が流れる___この沈黙はとても長かった。

「………お前は、撃つことを、俺の力を選んだのではないのか???」

沈黙を破るかの様に、深く、鋭く、冷たい声が轟く。俺はビクつきながらも、言葉に詰まりながらも正直に答えた。唇を強く噛み過ぎちまったようで、ちょっと痛い。

「ちげぇよ。あれは……ただ、怖くて、勝手に、、、体が…..」
「それがどうした? お前は選んだ、俺の力を。たとえ無意識でも、選択は選択だ…… 1週間以内に2発目を撃て。さもなくばお前も、あの男の様に…」

「えっ。あ? あの男の様にどうするんだよ?」

「全身の血管を……破裂させ、殺す」

「………え?」

サクッととんでもないことを言われた。俺はよくわからない。クソ悪魔は俺の状態なんかお構いなしに淡々と続ける。

「お前も覚えているだろう? この銃を拾った時に側に倒れていた男を。あいつは銃に認められたが、捨てようとした。だから最後の罰として俺はそいつを破裂死させた」

「……は? えっと、、、つ、つまりどういう….?」

深くため息を付き、悪魔はこう答える。

「俺はお前に力を与えた、与えられた以上は「力を行使するか」「正当に手放すか」選べ。選べないなら代償を払え。俺は代償としてお前の命を貰う。大衆への恐怖とお前の母親が悲しむ姿も添えてな」

……ッツんだよこれ。頭が痛くなってきた。俺は思わずしゃがみ込む。……ん?待てよ?不意に立ち上がり俺はザミエルに質問する。

「「正当に手放す」って手放すことができるのか!? お前…っていうかこの銃を俺は手放せるのか!?!?」

嬉しさのあまり思いっきり立ち上がり過ぎた。軽く飛び跳ねるところだった。。。
さっきから挙動がうるせぇな…俺。

「ああ。手放す方法は3つある。1つ目は俺がお前の意思を見極め、この銃も納得した場合だ。この場合は使った魔弾1発につきお前の未来の可能性…つまり「運命」を頂く。1発につき1運命を代償として払う事で、契約者は死ぬこともなく、この銃を手放すことができる。だが、この方法はお前には無理そうだ。

2つ目は、誰かに押し付ける方法だ。ただし押し付けた相手が不適正なら、押し付けた者もろとも破裂死する。押し付けられたものが適正と判断されたら、契約者は魔弾を使った分の代償を支払わされる。代償は何になるのかはわからない。

3つ目は、あの男の様にどこかへ放棄する方法だ。言わなくともわかるだろうが、殺す。俺が決めた期限以内に使わなくても殺す。覚悟のない者は要らない。俺が無価値と判断した瞬間に殺す」

「……えっと?? ザミエルさん? なんでとりあえず1番まともで平和そうな1つ目が「お前には無理だ」判定されているんですかね???」

恐怖に震えながらも、俺は恐る恐る質問する。

「……何故だかは知らん。だが、俺らをよく見ていた緑色の目が、お前の瞳と似ている。もしかしたら、それだけの理由かもな………コイツが納得しないだろうからお前には無理だ。1つ目の方法は諦めろ」

「えっ!!待って!? それってその人の名前ってリチャード・カーター!? もしかしてサンディエゴ歴史文化博物館に展示されてたりした!?」

「…知らん。名も、場所も。だが__あの男は、よく磨き、よく眺め、退屈な日々を少しだけマシにしてくれた。そう言う記憶は……ある」

明確に俺の父親だという情報は得られなかったが、多分きっと父さんだ……
こんなところで、こんな殺す殺す言ってくるクソ悪魔からまさか父さんの情報を得られるとは思わず、俺は顔が綻ぶ。涙が出そうになる。

「……それで? お前は俺を手放すのか?」

いきなり怖い声で俺を現実に引き戻す。
父さんの顔と、手放すという単語が頭に引っ掛かり、俺は、すごく嫌な光景が目に浮かんだ……

__俺が、この銃を手放して、もし、冷酷な奴や非道な奴にこんな危ないものが渡ったらどうするんだ……と。

それに、死にたくはない。
1週間悩んだ結果撃てなかったで死ぬのならまだしも……いや。死にたくないけど!!!
こんなギャングの多い治安の悪いところで、どこかにこんな危ないものを放置して死ぬなんてそんなこと俺にはできない。あまりにも無責任すぎる。それだけは避けたかった。

だから、実質、俺が取れる選択は2つ目の「誰かへ押し付ける方法」以外存在しなかった。

俺は少し悩んでから声の主にこう告げた。

「……銃が俺を気に入ったのはわかった。えっとその、ザミエルも契約者が銃にふさわしいか判断するんすよね??? その適正かどうかはどうやって決められるんですか?」

「ビビッとくるか否かだな」

「お……おう。ちなみに俺は、なんで選ばれたんだ??」

「それはお前が「引き金を引いた」からだ。それだけだ」

……は????なんて曖昧な基準なんだ???
俺は絶句し、頭を抱える。ダメだ、誰かに押し付けるのはリスクが高すぎて怖い!!!

「……はぁ。簡単なことだ。お前が撃てばいい。それだけだ。お前は既に最初の引き金を引いた。今更否定するな」

「…..っ、ふっざけんな!!! 何を撃てって言うんだよ!!!!」

「さぁな。お前が決めろ。だが覚えておけ、1週間だ。それ以上は待てない。選ばなければ、お前もあの血まみれの男と同じだ」

力強く、俺に釘を刺す様に悪魔はそう答えた。くそっ。悪魔め!!!!

「ちなみにさ、7発全て撃ち切ったらどうなるの?」

「…願いが、叶う……かな」

そう曖昧に、悪魔は答えた。その声は今までと違って、俺に語りかけるのではなく、どこか遠くの空を眺めているかの様な声だった。俺は、なんか、それ以上は聞いてはいけない気がした。

そして気づいてしまう。
ん????待てよ?冷静に考えたらやばくないか?・・・と。

「全弾命中し、当たったら必ず死ぬ7発の弾。それを全て撃ち切ったら願いが叶う」冷酷な奴や非道な奴だけじゃなく、一般的な奴が持ったとしても、銃撃事件がバカスカ起きるぞ!?躊躇う奴もいるかもしれないけれど見境なく殺しまくる奴の方が多いんじゃないか!?

そんな銃、とてもじゃないけど捨てられないし、簡単に人に渡すのも怖くなってきた・・・
相当信じれる奴にしか渡せない

俺がこのまま所持しているという選択が、1番マシに思えてしまった。とても癪だった。

でも、この銃を手放さないとしたら1週間以内に人を撃ち殺さないといけない。俺の将来の夢は警察官だ。もし仮に、この悪魔の言う通り、7発全て撃ち切ったら願いが叶うとして、、俺は、人を殺してまで警官になりたいとは思わなかった。

ともかく、やべぇなってのはすごくよくわかった。

_______________

俺、エイデン・カーターは、想像以上にとんでもないものを拾ってしまっていた……!!!
ザミエルから提示された「撃つか」「代償を払って手放すか」の選択の期限は1週間。
短過ぎんだろ1週間。くっそ悪魔め!!!!本当。どうすんだよ。俺。。。

とりあえず、結論は出ないから、人差し指にできた契約の印……この黒い痣を隠せる何かを探すため、ドラックストアへ出かけた。明日は普通に登校する予定だし、流石にこの傷隠さないとヤバいだろ?

それに、俺は、こんなものと契約しているなんて証拠を誰にも見せたくはなかった。
隠せるサイズの絆創膏か、テーピング用の包帯か、何かしらを求め俺はドラックストアへ買い物へ出かけるのであった!!!

コメントくださいお嬢様!